こんにちは! 芦澤ゼミ2期生のツォルモンです。
交換留学で、アメリカ・シアトルにあるワシントン大学フォスター・スクール・オブ・ビジネス(University of Washington, Foster School of Business)に来ています。
前回のレポートでは、大学とキャンパスについてご紹介しましたが、今回は「留学中の学び」についてです。
実際に授業に参加し、現地の学生とプロジェクトを進める中で、KBSとの共通点に安心した部分もあれば、根本的な考え方の違いにハッとさせられる瞬間もありました。そんな私の「気づき」をレポートします。
魔法の世界のような図書館で学ぶ日々
まず、私が普段どのような環境で勉強しているかを紹介します。
キャンパス内にある「Suzzallo Library」です。まるでハリー・ポッターの世界のような雰囲気ですが、ここはUWの学生であれば誰でも利用でき、一般の観光客も訪れることができます。

人の出入りはあるのですが、この空間にいると不思議と集中力が高まります。Fosterの専用図書館もありますが、総合大学であるUWのスケールメリットを感じながら、日々のリーディング課題やグループワークの準備に取り組んでいます。
授業の進め方はKBSと同じ?安心した「共通点」
留学前は、アメリカの授業についていけるか不安もありましたが、実際に始まってみると授業の形式そのものには驚くほど早く適応できました。
Fosterの授業は、ほぼ全てがディスカッションベースです。学生はネームプレートをデスクに置き、発言するときは挙手して、先生はそれを見て指名します。最初の数週間は全員ネームプレートを置いていますが、先生が顔と名前を覚えるにつれてだんだんとネームプレートが減っていく……という光景は、まさにKBSの日吉キャンパスで見慣れた風景でした。
グループワーク中心の課題設定もKBSと共通しており、私にとっては「いつものスタイル」でスムーズに入り込めました。
面白かったのは、同じ交換留学プログラムで来ていたオランダの学生の話です。彼女の大学では大勢の学生に対し教授が講義をするスタイルが主流だそうで、「このインタラクティブな形式に慣れるのに苦労した」と話していました。
これを聞いて、「KBSの日々の授業スタイルは、グローバルスタンダードだったんだ」と改めて実感し、KBSで培った基礎力に感謝しました。
卒業要件の違いから見えてきた、それぞれの教育スタイル
授業のスタイルは似ていますが、カリキュラム全体をみたとき、目指しているゴールの違いのようなものを感じることがあります。
私たちKBS生は、2年間の集大成として「修士論文」を執筆しますが、Fosterには修士論文がありません。
その代わり、フルタイムMBAの卒業要件には以下のような活動が含まれています。
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Summer internship/project(夏のインターンシップ)
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MBA core case competition(ケースコンペティション)
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Practical experience activities(実務経験活動)
これらを見ると、米国MBAはキャリアチェンジや即戦力の証明としての「実務・実践」に重きを置いており、一方のKBSは実務の知見を体系化し深く思考する「論文」を重視している、という違いがあるのかもしれません。
この「実践重視」の姿勢は、日々の授業にも色濃く反映されています。

これは「Entrepreneurial Marketing」という授業のひとコマです。
教科書的な理論だけでなく、MicrosoftやAmazonの元幹部、地元で人気のピザチェーン創業者などがゲストとして頻繁に登壇します。写真は、タピオカのポップアップ店からスタートして現在は抹茶カフェを展開している起業家が来たときのもので、なんと授業中に全員にほうじ茶ラテが振る舞われました!
片手にラテを持ちながら、創業者の泥臭いリアルな戦略を聞く。シアトルというビジネスエコシステムの中にキャンパスがあるからこそ実現できる、理論と実務の距離の近さに圧倒されました。
教室の外こそが学びの場:「Stay Alert」の教え
授業の中で特に印象的だったのが、「Journal」という課題です。
これは、毎週マーケティングの理論(キャズム理論など)に関するリーディング課題があり、「その理論に関連した『起業家的な動き(Entrepreneurial Venture)』を、今週のあなたの日常の中から見つけ出して記録する」というものです。
先生からは「Appleのような、誰もが知っている明らかな(Obvious)事例は書かないこと」と強く言われます。
有名な企業の当たり前な話ではなく、日常に転がっているけれど多くの人が見過ごしているような、ユニークなビジネスや取り組みを見つけなければなりません。
課題の要件に書かれたこの言葉が、授業の精神を象徴しています。
“Stay alert and you’ll start seeing examples everywhere you look.”
(常にアンテナを張っていれば、いたるところに事例が見えてくる)
この言葉通り、街を歩いているときや買い物中など、ふとした瞬間にアンテナを張ってネタを探すようになりました。私はよく、自分のバックグラウンドを活かして日本やモンゴルの事例を取り上げたりもしました。
日常の風景を「マーケティング」というレンズを通して見直すことで、「Awareness(気づき)」の感度が高まっていく。この感覚がとても新鮮で、学ぶ楽しさを感じました。
「正解」よりも「視点」? 教室で感じた空気感の違い
こうした日々のトレーニングがあるからでしょうか。
授業でのディスカッションの空気感にも、日本とは少し異なる傾向があるように感じています。
KBS、あるいは日本的なディスカッションでは、教授の問いに対して文脈を読み、「正解」や「的確な答え」を導き出そうとする丁寧さがあるように思います。
一方でこちらでは、正解を探すというより、ディスカッションを通じて「新しい視点(New Perspective)」を提示しようとする意識が強い印象を受けました。
特に刺激を受けているのが、働きながら通うEvening MBAの学生たちとの授業です。
彼らは質問に対して、教科書通りの答えを返すことはあまりしません。「自分の会社で今起きている問題」や「現実の業務上の課題」を、授業のトピックと瞬時に結びつけて発言します。
一見、「今の議論と関係あるのかな?」と思うような発言が飛び出すこともありますが、聞いていくと実は独自の切り口で論理が繋がっていて、教室全体に「なるほど、そういう見方があるのか!」という発見をもたらします。
日常業務の課題を授業に持ち込み、理論と結びつけて解決策を探る。そしてそれを恐れずに発言して議論を広げる。
この「個人の経験に基づいた視点の鋭さ」と「それを議論の場に乗せる積極性」こそが、私がここに来て最も刺激を受けた部分であり、残りの留学期間で吸収したいと思っている点です。
結びに
KBSにはKBSの良さがあり、FosterにはFosterの良さがあります。
「修士論文」というKBSの卒業要件に向けて、ここで得た「Awareness(気づき)」や「多様な切り口で議論する姿勢」をどう持ち帰るか。それが今の私の課題です。
次回のレポートでは、こうした授業以外の活動や、シアトルでのネットワークづくりについてお伝えできればと思います。