海外ゼミ合宿は、私が大学教員を志した時からやりたいと思っていたことで、前任校で2015年から毎年実施してきました(コロナの時を除く)。2年前に母校の慶應義塾大学ビジネススクールに移籍してからは、サバティカルで過ごしていたスタンフォード大学(シリコンバレー)で、ゼミ合宿をしています。
私が海外ゼミ合宿を実施する理由はこちら
シリコンバレー合宿の目的は3つあります。その3つを、ゼミ生の振り返りレポートを抜粋しながら、ご紹介したいと思います。(転載について、ゼミ生からOKもらっています)
目的1:ゼミMission実現のため
芦澤ゼミのMissionは「アントレプレナーシップの専門家集団として日本のスタートアップエコシステムに貢献する」。スタートアップエコシステムの最高峰のシリコンバレーを知ることで、日本のエコシステムの今後を考えてほしいと思っています。ゼミ生レポートには、まさに日米エコシステムの違いへの気づきがたくさん書かれていました。
(芦澤ゼミのMission, Vision, Valueはこちら)
ゼミ生レポート抜粋①
訪問先の方々が共通して「リビングデッドスタートアップ問題」を話されていたことが印象に残りました。シリコンバレーの起業家は難しいと思ったらまた別のチームで別の事業をスタートアップする、そのサイクルがとても速いとのことで、日本のスタートアップは大分状況が異なるように思いました。加えて、YCのような著名アクセラレーターを卒業すると、それがGAFAMへの就職切符になってセーフティーネットとして機能しているというお話も、日本の場合はYCのようなアクセラレーターもなければ、起業家を受け入れてくれる大企業も少ないため、日本との大きな違いだと感じました。
ゼミ生レポート抜粋②
AI技術のお話が多く、日本とアメリカ、アメリカ国内でも技術の進展や普及速度にかなりのタイムラグがあることが印象的でした。日本ではまだライドシェアを良しとするかどうかの議論の途中なのにベイエリアでは既にWaymoやZooxなどが普通の光景になっていたり(これはアメリカ国内でも格差が大きかったですけど)、日本ではこれからはAIの時代だみたいな雰囲気なのに対してアメリカではAIはバブルか、いつ弾けるかの議論が多かったりと差が大きく感じました。

目的2:ゼミValueの理解のため
芦澤ゼミのValueは「視座高く、視野広く。継続的に学び、挑戦する。自立し、助け合い、未来に貢献する・明朗快活に!」としています(長くて覚えられないので短くしようかと検討中)。
私自身がValueを体現し、背中で見せるようにしているのですが、どうしても限界があります。特に日本社会では、このことを実践することが難しく、そもそも理解もしがたいものです。
このValueは、私がシリコンバレー滞在中に感じたことであり、かの地のエコシステムの文化的土台となっているものです。そうであるなら、「シリコンバレーに行けば、ガツンと腹落ちするのではないか」そんな期待を込めて合宿先をシリコンバレーにしています。
ゼミ生レポート抜粋③
スタンフォードで、私とは違う「当たり前」の世界の中で生きる学生を見て(グローバルCEOが遠い存在ではない世界、飲み会後に図書館に戻って徹夜で勉強する世界など)、訪問先の皆さんが、世界の変化を読もうとし続ける姿、うねり続ける世界の中で芯を持って圧倒的な熱量で楽しみながら働き続ける様子を見て、今まで見てきた世界(日本だけでなく海外も)よりも広く深い世界を垣間見ました。自分が進みたい、進まなければならないと思える世界を見ました。
そしてそれと同時に、何かよくわからない不安感がのしかかってくるように感じました。どうすれば自分が行きたい世界に辿り着けるのか、黒いモヤがかかったように見えなくなって、今はまだ現状との差分が曖昧です。自分の想定していた小さくまとまった世界では、到底辿り着けないと思い知らされました。そんな気持ちで帰国したら、先生からスタンフォードと慶應の学生交流プログラムのアナウンスをいただき、「こんなのチャンスでしかない」と思いました。視座を高め続け、視野広げ続け、生きていくために、すぐ行動しながら考え続けます。
「帰国したら3日で元に戻るから気を付けて」と言われましたが、3日程度じゃ戻れないほどしょげました。しょげてからが本領発揮です。
ゼミ生レポート抜粋④
今回の合宿を通して、私は自分の信念を言葉にして伝えることの大切さに気づきました。合宿の3日間を通して、はじめましての方々と次々に話す機会がたくさんあり、そのたびに「あなたは何者なの?」という問いを突きつけられたように感じました。シリコンバレーでお会いした方々は、それをとても自然に語り、肩書きや組織ではなく、そこにあるストーリーを語っていたことが印象的でした。しかもそれが全く嫌味なく、すっと心に入ってくる。この様子が私にとってはかなりカルチャーショックでした。
改めて振り返ると、私はこれまで、控えめでいることが美徳とされ、相手を立てることが礼儀とされと感じてきました。常に相手にどう思われるかを気にして、自分の信念を語ることにどこか抵抗を感じてきました。
しかしながら、この合宿で信念をもって発信する人たちの姿に触れて、自分がもっているトピックや信念が相手にどのように影響を与えられるか考えながらもっと表出していかなければと感じました。

目的3:ゼミVisionの実現のため
ゼミのVisionは「芦澤ゼミOBOGが産学官、国内外で活躍していて、互いに刺激しあい、助け合い、切磋琢磨している」としています。そして、私がゼミ成功のKPIとしていることがありまして、それは「OB会の出席率が50%を超えること」。これは相当難易度が高いのですが、これを実現するには、私だけの力じゃどうにもならなくて、ゼミ生同士のキズナが何より重要だと考えています。OB会の案内が来た時、「同期や先輩後輩に会いたい。ついでに芦澤先生にも会えたらいいな」と思うような姿を目指しています!
キズナは「同じ釜の飯を食う」ことから生まれます。自分の中で強い印象として残るような経験を共にした仲間を作る。これこそがキズナの土台になると思って合宿をしています。
ゼミ生レポート抜粋⑤
チェックアウトの時間を通じて、お互いにまだまだ知らないことを知ることができ、気づけば心の距離が一気に近づいていました。改めて振り返ると、4月にゼミが始まって以来、4人だけでじっくりと話す機会は実は一度もなかったことに気づきました。
なぜここまで盛り上がったのかを振り返ると、単なる感情共有ではなく、4人で1つの目的に向かう意識が自然とチームビルディングを促したのだと思います。
ゼミ生レポート抜粋⑥
やっぱり合宿を通じて、芦澤ゼミが前よりも仲良くなれたことが嬉しいです。毎日時間が遅くなってもチェックアウトをして、移動中の車でたくさんお話をして、とても楽しく素敵な時間でした。
芦澤感想
「やっぱり環境なんだよね。視座が高く、視野が広くなる環境。それが一人一人の力を最大まで引き上げる。KBSにそういう環境を生み出し、日本のスタートアップエコシステムに貢献するコミュニティを作りたいよね」
そんな会話が自然と出る、素晴らしいゼミ合宿でした!

芦澤美智子