2026年1月から議論を重ねてきた「日本成長戦略会議スタートアップ政策推進分科会」。5月20日ついに「スタートアップ総力創出パッケージ ~イノベーションを生み出す、育てる、実装する~」が取りまとめられました。委員の一人として議論に加わってきた立場から、その意義と、ここに至るまでの思いを記しておきたいと思います。
長年解けなかった「ニワトリと卵」に道筋が示された
第1回会議の冒頭、私はこう問題提起しました。「スタートアップのスケール化をめぐっては、『十分な資金がないから大きくなれない』という声と、『有望なスタートアップが少ないから投資できない』という声が長年拮抗し、グローバル規模のエコシステムが回らないまま今に至っている――いわば「ニワトリと卵」の問題が存在します」と。今回のパッケージは、この長年解けなかった難問を解く道筋を示した、画期的なものだと考えています。
■「有望なスタートアップが少ない」という側には、政府調達・デュアルユースによる初期需要の創出。特に防衛分野でSBIRが抜本強化され、アンカーテナンシー型の試験導入から契約運用の改良、伴走支援体制の構築まで示されました。中長期の大型需要に予見性が生まれ、それを土台にグローバルへスケールする企業が育つ――その道筋ができたことは、大きな前進です。
■「十分な資金がない」という側には、DBJやJICといった政府系機関による資金供給、債務保証制度の拡充、機関投資家からの資金供給拡大。政策として資金を大型化していく道筋が描かれました。
国によるスタートアップエコシステム形成のコミットメントは、今や世界標準となっています。それがようやく日本でも示されるようになってきました。もちろん2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」で意欲は表明されていました。そこに今回、「実弾」が込められたということだと思います(ちょっと物騒な表現ですがあえてわかりやすくするためにこの表現を使います)。ディープテックの社会実装は、長期予見性の低いものです。だからこそ「国が顧客になります!」「国がリスク取って資金を出します!」と率先して示すことで、民間が続く呼び水となる。そういう産業育成の活動が極めて重要になってきている。日本もとうとうそこにちゃんと踏み込むことになったということだと思います。
2018年から8年。研究知見が、政策になった
私がスタートアップエコシステムの研究に本格的に着手したのは、2018年でした。あれから8年。これまで積み上げてきた研究知見が、こうして日本のスタートアップ政策に反映されていく――研究者として、これ以上ない誇りを感じています。会議では毎回、勇気を振り絞って手を挙げ声をあげました。マーガレット・オメーラの「The CODE」だったり、時に論文を引用し、また私もいた研究チームの結果も持ち出し、大臣以下政治家の皆様と官僚の皆様に「やっていただきたい」とお伝えすることもありました。
ある意味私たち委員は「やってください!」と主張するだけかもしれなくても、予算通して制度改正をするプロセスを担うのは官僚の皆様。「じゃあどこをどうやって?」の調整は垣間見るだけでも大変。会議の前後でもたくさんのドラマがありました。
「ダメかも」と思う場面もたくさんありましたが、今回のチームはすごかった。力量、熱量、気迫が揃い、みんなが熱くなっていった。その結果が、今回のパッケージへとつながったのだと思います。
📑 私が提出した提案書
心から感動した、最前線の働き
この5か月間、心を動かされたのは、内閣府、経済産業省、そして各省庁の皆さんの、文字どおり寝る間を惜しんだ働きでした。この短期間で、ここまで骨太な内容にまとめあげた熱量に、深く敬服しています。委員の皆さんとの議論も、真剣そのもの。それぞれの見えてる現場からの珠玉の提言を投げ込む委員の皆様の知恵と勇気と実行力には、何度も感銘を受けました。
政府の委員会は「しゃんしゃん」と終ることも多いのですが、この委員会は違いました。2回目、3回目の会議は2時間に及び、参加された政治家の方々の複数が「こんなにエキサイティングな会議は初めてだ」とおっしゃっていたのが、強く印象に残っています。時に委員同士でぶつかること、積み上げてきた知見をもってして官僚の皆様に「それは違います」と言われることも多く、決して楽な道のりではありませんでした。それでも一切手を抜くことなくみんな「日本の未来のため」に懸命でした。ここで得た代えがたい経験と、一生ものの人間関係こそは、私にとっても大きな財産になると感じています。(冒頭の写真は、最終回の会議の直後、奔走していた事務方の皆様と委員とで撮った記念の1枚)
最終日、城内大臣を囲んで
ここからが、本番
とりまとめは、ゴールではなくスタートです。今後は実行のスピードと規模が極めて重要になります。私自身も、イベントへの登壇、研究調査、教育、そして起業支援といった形で、政策の実現を全力で後押ししていきたいと思います。いよいよ、日本の「ソコヂカラ」が「強い経済」へとつながる道筋ができた――そう実感しながら、心からワクワクしています。
お約束の1枚紙。職人芸。ビジーすぎる!
一連の情報はこちらにて