2026年6月18日、CIC Tokyoで開催された「J-Startup Hour 第181回『徹底討論!女性起業家支援の最前線~インクルーシブなエコシステム形成に向けて~』」に登壇しました。
一つの報道から政策が生まれるまで
政策は、ある日突然つくられるわけではありません。今回のテーマであるスタートアップエコシステムにおけるハラスメントについても、多くの人が時間をかけて課題を明らかにし、議論を重ね、関係者を巻き込みながら、少しずつ政策へとつながっていきました。
一つの転機となったのが、2024年にNHKが報じたスタートアップエコシステムにおけるハラスメント問題でした。その背景には、同年に公表された柏野さんの研究調査があります。研究によって明らかになった事実が社会的な注目を集めたことで、ハラスメントは個別の問題ではなく、スタートアップ業界全体が向き合うべき課題として認識されるようになりました。
その後、私が官邸での規制改革推進会議にて岸田総理、林官房長官などにこの件を投げ込み(その時の議事録はこちら)、翌年の規制改革推進会議の答申において「要調査」(P105)と書き込まれたことで、2025年秋から経済産業省の協力を得て私も研究チームとして参加した「東京大学、京都大学、一橋大学、慶應義塾大学の4大学による調査」が実施されました。そしてその調査結果をもって、日本成長戦略会議スタートアップ政策推進分科会に「インクルーシブなエコシステム形成に向けて」という議論を投げ込みました。そして、それが政策に繋がっていきました。こちら
私は、この一連の流れをとても重要だと考えています。課題があれば、まずファクトを集める。そして、関係者を巻き込み、政策として実現する。研究によって課題を可視化し、調査によってファクトを積み上げ、それを政府の会議などで問題提起する。そして、多くの関係者と議論しながら、実現可能な施策へと落とし込んでいく。
ハラスメントは、女性だけの問題ではない
今回のセッションでは、女性起業家支援についても議論しました。私は、女性起業家支援を女性だけで行うことは、必ずしも効果的ではないと考えています。社会の中で力や資源を持つ人たちが、マイノリティの支援にしっかり関わり、一緒に取り組むことが重要です。スタートアップエコシステムにおいては、女性起業家だけでなく、投資家、経営者、行政など、さまざまな立場の人が関わっています。だからこそ、女性だけの閉じたコミュニティをつくるのではなく、多様なプレイヤーがつながることが重要です、
また、私が関わった調査では、回答した起業家の約3割が何らかのハラスメントを経験していました。そして、ハラスメントは女性だけの問題ではなく、男性起業家も被害を受ける可能性があること、加害者もVCだけではなく取引先など幅広く存在することが明らかになっています。ハラスメントによる影響は、精神的なダメージだけではありません。怖い人がいる場所には、行きたくなくなります。イベントやコミュニティに参加しなくなれば、起業家にとって重要な経営資源であるネットワークが細くなり、資金調達や採用、情報など、本来得られるはずだった機会まで失われてしまいます。つまり、ハラスメントを一人の起業家だけの問題ではなく、スタートアップエコシステム全体の活力を奪う問題なのです。
議論の詳細については、スタートアップDEI推進協議会のnote記事をご覧ください。https://note.com/startup_dei/n/nde483f5fcaf5
そういえば、日本成長戦略会議スタートアップ政策推進分科会での議論が終わった後、担当の城内大臣から「インクルーシブなエコシステム形成の提案は素晴らしかったと思います」と直接お声かけいただきました。配慮あふれるお声かけ。たくさんの研究者や実務家、政策当事者が関わって持ち上がった議論を評価してくださり、嬉しかったのを覚えています。その時の写真がこちら
